キングオブコント2019 雑感


※当ブログは「キングオブコント2019」の結果などネタバレが多数あります。まだ見ていない方は録画かParaviで是非。

 

さて、今回リアルタイムでは観れなかったんですけども、何も情報を入れずになんとか録画を観ることができました。いろいろ思うところなどもまとめて書こうかと。では早速。

※あくまで個人の感想です

 

1.うるとらブギーズ「催眠術」

男が催眠術をかけようと選んだ観客は、少し厄介な癖の持ち主で...

 

設定よりシステムを重視したコントは、そのシステムが説明されるまでどうしても「何が起こっているんだ?」となりがちで、それを会場が温まり切っていないトップバッターでやるのは、難しいところがあると思うんですよ。けどこのコントは凄かった。(コントの中の)他の観客の声をカシモトさんに言わせるところや、「遊ぶのは良くないと思います」というセリフ。「癖を催眠術で治すために来た」というストーリーを持たせることなど、うるとらブギーズというコント師の技量を見た。

トップバッターの点数としては少々高すぎたかと。もちろん面白かった。この点数じゃ不服かと言われればそうとも言えない。最初から高得点をつける豪快さは嫌いではないけれど、思えばこれが今大会のレベルの高さを物語ると共に、有力候補の伸び悩み、どぶろっくの逃げ切りに繋がった一因ではあるのかなと。

 

 

2.ネルソンズ「野球部」

マネージャーが夜遊びしているという噂を聞いた和田。さっそく他の部員に話すが...

 

和田まんじゅうさんが自分から悪手悪手を選んでいき追い込まれていくネタが多いこのトリオ。これもその軸に乗っ取った彼らの真骨頂とも言えるネタ。とにかく勝手に自滅していく様が面白い。「間違えた...」をあれだけ面白く言える、面白く見せる天賦の才があるなと。

 

3.空気階段「タクシー」
乗ったタクシーの運転手は、前にも自分を乗せたというが...

 

「迷路書いてます」や「目黒まで」「根室まで?」というしょうもない小ボケ(褒め言葉)がこの運転手の胡散臭さを引き立てていて、一瞬で「変な運転手と客」という設定ですよと観る人に思わせている。「しゃっくりなんで」は言い方や表情も相まって、今大会で1,2を争うくらい笑ったかもしれない。だが客を下ろしたところから一変、「小ボケをかますよくいるおじさんと似た顔の客」という非日常になる。これは素晴らしい。「『ボケだと思っていたものがボケじゃなかった』というボケ」にやられてしまった。点数以上に面白かったと思います。

個人的にもっと点数が伸びてもいいのかなと思いました。これで最下位ですか?という。

 

4.ビスケットブラザーズ「二人」
上ばかり向いていたら知らない町に来てしまった人と、下ばかり向いていたら知らない町に来てしまった人が出会う...

 

コントとは自由である。イカれた二人のボケの応酬でも良いのだ。中盤でBGMが流れ出したって良いのだ。イカれていた理由が(二人なりには)説明されていてちゃんとストーリー性がある。不条理で無秩序なようで、実はしっかりとしていた、そんな印象です。「『サン』『デー』『マン』『デー』」や「『キーン』『コーン』『カーン』『コーン』」も光っていた。

 

5.ジャルジャル「野球部」
新入部員と補欠の教育係が投球練習をするが...

 

福徳さんの一定の距離を離れると英語に聞こえるというシステムを、「周波数」「小さいとき病院で診てもらった」という力ずくで納得させるのがジャルジャルっぽくていい。そこに順応していき色々楽しそうに試す後藤さんという、休み時間に教室の後ろではしゃいでる二人感もいい。そして問題のオチ。しょうもないダジャレで終わらせるという。ずっとジャルジャルっぽくてよかった。

 

6.どぶろっく「女神」
母が不治の病に冒された男に舞い降りた女神は、「一つだけ願いを叶えてやる」と言う...

 

ズルい。こんなん面白いもん。「どぶろっくってもしかしてだけど~♪って下ネタソング歌う人たちだよね?どんなコントするんだろう?」という思いを、とんでもない下ネタでねじ伏せてきた。"下ネタ"というのは、そして"天丼"というのは、ハマれば簡単に笑いが取れるものであると同時に、ダメだった場合冗談抜きで60点が出てもおかしくない諸刃の剣なんですよね。だからよほどの自信がない限り「そりゃ大きくて長い大剣の威力が高いのは知ってるけど、使いこなせなかったら大変だし自分に合った剣で戦おう...」となるんだろうと。
これはイチモツという名の大剣を振り回す剛腕をどぶろっくは持っていた。それだけの話です。素晴らしい。

ただ審査員のおじさんたち。このコントが480/500点でいいのか?はしゃいでないか?とは思いました。批判とかではなく、「おいおい笑」という感じですが...。

 

7.かが屋「プロポーズ」
大きな花束を持ち、喫茶店で女性を待つ男が座っていた...

 

「日常の中の非日常」というのが設定としてはよくあるもので、それとはまた別にラーメンズのような「非日常の中の日常」というのがありますね。それで言うと かが屋は「日常の中の日常」。このネタは、叙述的に進行していくわけではなく、回想シーンを何度も織りまぜるが、その見せ方が素晴らしい。そしてなんと言っても終盤の一コマ。「それは遅れたことに対してだよね...?」というセリフ。いないはずのミユキが見えた。喋った。かが屋の表現力の凄さを見た。オチも、この日常を壊さない最高のもので、僕は完璧だったと思います。霜降り明星がしもふりチューブ内で「衝撃を受けたコント3選」という企画をしていましたが、僕はこれを挙げるかな。というくらい好き。

 

 8.GAG「女芸人」
男女コンビを結成した女芸人は、相方とそのネタを彼氏に見せるが...

 

ツッコミがたまらない。よくあるブスいじり、しかもコント中のようなつまらないものでさえ、視点が変わるとここまで面白くなるのかと感心しました。空気感でジワジワ面白いし、ちゃんとわかりやすい笑い所もある。さすが3年連続出場なだけあるなと思いました。最後まで市役所を引っ張るのも良かった。

そういえばこのネタをGAG少年楽団のころにどこかで観たような曖昧な記憶があるんですけど、どうでしたかね。

 

9.ゾフィー「謝罪会見」
不倫の謝罪会見をするのは、腹話術師で...

 

この設定を思い付いた時点で勝ちみたいなところありますよね。めちゃくちゃ面白かった。ふくちゃんの可愛らしさと不気味さが絶妙で、いいなぁ。寝起きのリアクションなんて手を叩いて笑っちゃったもんなぁ。人形と会話していることが記者会見の場としてどうかしているのに、思わず立ち上がってしまう記者のバカバカしさ。そしてそれを人形に指摘されるというバカバカしさ。素晴らしいコントでした。

松本さんが「カメラワークに助けられていた部分があったんじゃないか」という旨のコメントをしていましたが、僕としては記者会見という設定、そしてテレビでのコントということで、それは良いじゃないかと思いました。実際予選から噂で聞くほどハネていたらしいですし、今回のカメラワークが凄かったのはありますが、適切に映ってさえいれば、少し違っても笑えたのではないかなと思います。
というかカメラの映り方云々があるなら、最初から固定カメラでやらないとフェアじゃないみたいになりません?あれだけコント中に審査員を抜いておいて?というモヤモヤが残ってしまう...

 

10.わらふぢなるおバンジージャンプ
彼女にフラれた男がバンジージャンプをしにやってくるが...

 

とても良質なコントなんです。掴みがまず早い。そして緩すぎず熱すぎないツッコミ。名前のくだりなどの個性的なボケ。後半ではインストラクターが飛ぶという動き。突出してダメな点が無くて、これで最下位か?とは思うんだけど、今大会においてはあまりにもベーシックすぎた。賞レース向けコントのお手本。基準点となるべきコントが最後に来てしまった...のかなぁ?

「いろんなコントを観すぎて飽きちゃった」ってのは、審査員が絶対言っちゃいけない気もするんですけども、わかってしまうっちゃわかってしまう。緩急が足りなかったのかなぁ...。ツッコミがどうしても一本調子になってしまうんだよな。凄く面白かったので残念です。

 

ここからファイナルステージ。なのだが、3位がジャルジャルGAGで並んでいるため決選投票に。投票の結果3(設楽 日村 松本):2(三村 大竹)でジャルジャルがファイナルステージ進出。
もっと時間配分やりくりして、どうにか5組に出来ないもんなんですかね。

F1.ジャルジャル「空き巣」
男が空き巣に入ると、そこには家主が。咄嗟に友人だと嘘をつく...

 

うーん...。嘘を突き通すというネタはジャルジャルの有名ネタにもあって、どうしてもその感じが否めない。いわゆるベタ。ただ二人のやりとりなどは面白く、絶妙につまらない一発ギャグなどジャルジャルらしさも光っていた。最後のオチは、セリフそのまま。「わからんわ」
どうやら本当はこのネタじゃなかったらしいのだが、福徳さんの怪我により、ネタを変えざるを得なかったらしい。事前説明が出来れば混乱を招くことはなかったのかもしれない。ここでも決勝進出者シークレットのダメなところが...。

 

F2.うるとらブギーズ「サッカー実況」
元日本代表とアナウンサーによる日本代表戦の実況。見逃せない戦いの開始が迫るが...

 

いるじゃないですか、お喋りな解説者って。サッカーの松木安太郎氏や我らが北海道日本ハムファイターズ解説者岩本勉氏しかり。このコントは二人の不毛なやり取りが本当に良いところを突く。5分ネタと言わず90分フルタイムで観たいくらい。一回目の見逃したというボケでシステムを説明すると共に、観ている人の脳内に架空の試合状況を作り上げ、連動させていた。うるとらブギーズというコンビは、本来見えない人や情景をお客さんに"見せる"のがとてもうまい。今大会ではその技量は うるとらブギーズかが屋 がぶっちぎりでうまかった。

 

F3.どぶろっく「金の斧銀の斧」
鉄の斧を落とした木こりの前に、神が舞い降りる...

 

配役が逆になっただけで一本目のネタと流れは一緒。曲も一緒。Cメロでの神の葛藤から最後で木こりが大きなイチモツを求めるところは良かった。って真面目に書くのもバカらしくなる内容。面白いから良いんだけど。「来るぞ...来るぞ...来たー!」という感覚には抗えない...。

 

 

結果はどぶろっくが優勝!

どう?急に大きい文字が来るとブログの胡散臭さが増しません?

 

個人的には空気階段 かが屋 GAG ゾフィーの一本目、うるとらブギーズの二本目が好きでした。

 

総評

とてもハイレベルだったと思います。どのネタも非常に面白かった。それだけにネタ以外のところが目立ってしまう。
まずクソダサOP。来年以降は絶対おじさんに「結果発表」を叫ばせないでいただきたい。
審査基準や点数については、それぞれの考えがあると思うので批判はしたくないですが、毎年毎年天丼ネタがウケすぎじゃないです?コロチキしかりライスしかり、ロッチしかりチョコプラしかり。お笑いファンが懸念していた審査員が変わらないと勝つためのコントの基準ができてしまうのではいうところで、やっぱりコンビで審査員ってそもそも...って思うんですよね。特にさまぁ~ず。お笑いファンの妄想をひけらかすとすれば、冷静な審査が光るバナナマン設楽さん、ある程度必要な点数の豪快さ、そして時々大納得のコメント(前大会ザ・ギースへの「刑事が犯人じゃない方が...」、今大会ジャルジャルへの「最後福徳もいてほしかった」等)をするさまぁ~ず三村さん、外すことはできないダウンタウン松本さんに、東京03飯塚さんやアンガールズ田中さんを加えてほしいなぁ。話を戻すとして、結果的にこういう「イチモツの天丼」が優勝したことが、果たして良かったのだろうかと。「コントでずっと食べていける人を優勝させたい」「にゃんこスターみたいなのは...」とはなんだったのか。

それで言うわけじゃありませんが、空気階段かが屋ゾフィーが伸び悩んだ点については書いておきたい。と言いつつ、三組とも僕の個人的ベスト3なので、なんでなのかとかわからないです。いや、あるんでしょう多分。一つ言うとしたら、この三組はなんというか、ネタを観た女優とかが「一本の映画を観たような...」って感想を言いがち。つまりコントの大会としては爆発力が足りないのかなぁと。正当な評価がされていない!と厄介な文句を言うつもりは全くないんですけど、そりゃ天丼だったり下ネタだったり、わかりやすいインパクトのあるネタが好まれる大会じゃ、うーん、こうなるのも仕方ないのかなぁ...。あまりにも異種格闘技戦だなぁと。難しいなぁ...。

まぁなんやかんやで、どぶろっくの優勝というのはめでたいですし、あらびき団視聴者からすると、最高以外の何物でもないんですけれども。下ネタで日本一になった、そのスタイルを曲げずに手に入れたチャンピオンという称号は輝かしいです。おめでとうどぶろっく!
長々と読んでくださりありがとうございました。次はM-1グランプリ2019で。

お笑いのある世界に生まれて良かった